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【兵庫県三田市】訓練を通じてSNSやAIの有効性の評価、防災DXソリューションの運用体制を確認

経営管理部行政管理室危機管理課 平井 大策様

訓練実施までに至る背景

JX通信社様から、災害時の情報収集ツールとして「FASTALERT(ファストアラート)」を紹介いただき、2021年9月からトライアルを始めました。

三田市では、大きな災害に見舞われることが近年はなく、職員の防災意識の希薄化や災害対応力の低下が懸念されていました。FASTALERTのトライアル期間中にも大きな災害はなかったのですが、三田市における懸念事項や全国の防災対策の動向などの意見交換をJX通信社様とは定期的に行っていました。

その意見交換のなかで、JX通信社様からFASTALERTを使った机上訓練を通じて、防災DXソリューションの効果の体感、災害対応力の向上を図ってはいかがとご提案いただきました。

三田市ではスマートシティの実現に向けて「さんだ 里山スマートシティ構想」を掲げています。スマートシティに関する取組として、FASTALERTのようなDXソリューションを活用した訓練を試験的に実施してみることにしました。

三田市の被災事例と当時の課題

災害対策本部の事務局は、平成30年7月豪雨、台風第21号、台風第24号時に開設されたのが最後になります。

当時の被災状況の把握方法は、市民からの電話通報や市職員のパトロールによるものだけでした。ただ、情報の伝え方は個々で異なりますし、情報を受け取る職員によっても本部事務局へ伝わっていく内容が若干異なってしまうこともあり、現場の状況を的確に把握することが困難でした。職員が現場に行った結果、思っていた状況とまったく違うこともありました。その都度、応援を要請する判断を下したり、その逆で「土嚢積み対応のために4人で行ったけど2人で対応できた」といったこともありました。

当時は、災害対応経験が豊富な職員のみが何度も対応するといった状況でした。その特定の職員に頼ることで対応できる部分も一定程度ありましたが、近年の激甚化・頻発化している災害には根本的なマンパワー不足で対応が難しくなることが想定されます。

今では、職員の働き方改革も考慮し災害時の対応をシフト制にしています。その結果、災害対応経験のない職員が災害対応を行っていく可能性が高まっています。過去の教訓も踏まえ、災害時には正確な情報収集が特に必要であると考えています。

災害時における情報活動の重要性

行政は平時・災害時ともに様々な媒体を使って情報発信をしています。情報を適切に発信していくためには迅速かつ適切な情報収集が重要となります。特に、災害時には従来の情報収集手段にくわえて、SNS等で取得できる動画や写真による視覚的な情報やハザードマップ等を組み合わせることで、より迅速かつ正確に状況を分析でき、適切に情報発信できるようになると思います。

分析した情報は「避難指示等の発令」を適時適切に行うための素材として活用できると考えます。近年の雨の振り方を振り返るに、市内全域に避難情報を発令するのではなく、地域ごとに発令区域を分けて発令していくことも必要になってきていると感じています。市内全域に避難情報を発令すると市内の避難所全てを開設する必要が生じ、避難所開設・運営業務を担当する職員数がそのぶん必要になります。行政のマンパワー不足を一定解消する意味でも迅速かつ正確な情報収集や分析は重要と考えます。

実施した訓練の特徴

今回の訓練は、状況付与型のロールプレイング形式で実施した災害対策本部事務局の運営訓練です。懸念していた防災意識の希薄化や災害対応力が低下している状況などを鑑み、災害対策本部事務局の運営に携わった経験のない防災初任者を対象とし、災害対応力の底上げを狙いとしました。

訓練シナリオは、避難指示の発令が必要となる事態を想定し、市民からの電話対応や関係部署との情報連携を通じた各種災害対応業務の実施から災害対策本部会議の開催までを実施しました。

FASTALERTは、従来の情報収集手段である電話やFAXにくわえて、現場の状況をリアルタイムかつ視覚的に把握することのできる補助的な情報収集ツールとして、災害対策本部事務局の各班で利用しました。

訓練でFASTALERTを利用してみた感想

リアルタイムで位置と視覚情報を把握することができるため、様々な災害対応を検討する際に有効であると感じました。市民からの電話通報等で得た情報とFASTALERTで得たSNS情報とを照らし合わせることにより、市全体の被害状況を俯瞰的に把握することができるとも感じました。災害時にSNSへ投稿する方は近年では特に多くなっていますし、導入価値はあると考えました。

実際の運用体制を考えると、「FASTALERTを使うことで現場の被災状況が本庁にいても把握できるのはメリットがある。例えば、冠水と一言でいっても車が走れる状況なのかどうかで対応内容は全く異なってくる。」とアンケート結果にもあったとおり、市民からの電話通報を対応する班ではなく対応方針を検討する班のほうが適切だと思います。市民情報等収集担当は、電話応対にくわえて応対内容をシステムに入力する業務も担っているため、既存業務のみで忙殺されてしまう可能性が高いと考えています。

三田市の防災減災に関する今後の取組方針

三田市では、「さんだ防災強化プログラム」を策定し、5か年で災害に強い三田を実現するための21の施策を計画しています。市民の適切な避難行動を促進し、風水害から逃げ遅れゼロを目指すとともに、地震の備えとして公助の取組みを強化し、市民が安心して暮らせる「災害に強いまち」の実現を図るために、災害情報の発信手段の多様化やそれらに一斉に配信することができる仕組みの導入などを進めることとしています。

さらに、さんだ里山スマートシティ構想を掲げて防災を含む様々な領域のDX化を推進するため、庁内にデジタル推進担当を設けています。

三田市では「防災体制の強化」と「DXの推進」に注力をしていますが、防災における有効なデジタルツールの1つとして、今回の訓練で利用したFASTALERTやNewsDigest(※FASTALERTが収集対象としている情報源の1つ)を活用した情報収集体制の強化は、まさに市が取り組んでいる防災DXの枠組みにあてはまると思います。

「さんだ防災強化プログラム」に基づき、デジタルツールを活用しながら各種の取組みを推進していくことが、三田市における防災・減災の取り組みに繋がっていくものと考えています。

本取組に関する問い合わせ先

〈株式会社JX通信社〉
公共戦略チーム担当課長
広兼 達也
t.hirokane@jxpress.net
080-4384-9040

【略歴等】
大学院では、ジブチ共和国で流域解析やリモートセンシング技術等を活用した地表面流出モデル開発に資する基礎研究に従事。 その後、砂防堰堤や河川構造物設計の技術者、地方自治体や民間企業の防災計画及び関連マニュアルの策定支援や防災訓練の企画運営等を支援するコンサルタント業を経て、現職ではAIやICTを活用した防災力向上に資する各種提案を幅広く実施。

〈三田市役所〉
経営管理部 行政管理室 危機管理課
山下 栄二(記者からの連絡窓口)、平井 大策(記者以外からの連絡窓口)
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