社長メッセージ

我々はなぜ「報道の機械化」に取り組むのか

報道を取り巻く課題とは、より具体的に言えば、「報道」の大部分を担う新聞やテレビと言ったメディアの滞在時間が他に奪われ、その滞在時間に比例する広告・課金収益が減少しているという課題だ(=流通構造と収益の課題)

収益が減少すると、従来賄えていたコストが賄えなくなり、取材等にかけられる時間・金銭・人的コストが減り、結果「報道の質」が下がる現象が起きる(=コスト構造の課題)

「報道の質」が下がることは、付加価値の低下につながる。付加価値が低下することで消費者はより滞在時間を他に移し、また出費にも慎重になる。広告・課金収益減少が更に加速する(=報道の質、付加価値の課題)

このように、これら3つの課題は密接に絡み合っている。それを前提に、考えてみたい。

現在、報道を取り巻く課題、とりわけ「新聞離れ」「ニュース離れ」などと言われる現象を議論する際、当事者が最初に論じたがるのは「報道の質」の課題だ。読ませる記事が少なくなった、スクープが小粒になった、政治に対して弱くなったー。例を挙げればきりがない。そうした「報道の質」の議論から転じて「消費者の質」を課題視する議論さえある。「若者の新聞離れ」を、若年層の知性の欠如のような論旨で語るのはその典型だ。

しかし、そうした議論は本当に課題の解決につながるだろうか。課題を正確に認識し、論理的に因数分解を試みて初めて解決策が浮き彫りになるのではないだろうか。

「報道の質」の課題の前段階にあるのは「コスト構造の課題」、そしてそれ以前に「流通構造と収益の課題」である。収益の課題を早くから見越した報道機関は、旧来の流通構造に縛られずにデジタルでの広告・課金収益の課題に取り組み、その課題をある程度克服しつつある。しかし、ビジネスモデルは収益とコストのバランスで成り立つものだ。主として人力依存、人海戦術の労働集約型モデルに起因するコスト構造の課題に切り込まずして、報道機関というビジネスモデルの存続は保障されない。

JX通信社が「ビジネスとジャーナリズムの両立」をビジョンに、そのためのテクノロジーに取り組むことをミッションに掲げているのは、こうした考えからだ。

今日、AIによる緊急情報サービス「FASTALERT」が東京の大半のテレビ局をはじめとする多くの報道機関に導入され、日々の事件・災害報道に貢献している実績は、我々がそのビジョンの実現に近づいたことを示している。かつて報道現場で、これほどまでにAIが活用されたことがあっただろうか。

同じように、一般消費者向けのニュース速報アプリ「NewsDigest」が、新聞社・テレビ局記者の必携アプリになりつつあることも、そのビジョン実現の可能性を別の側面から示している。ストレートニュースをいち早く消費者に届けるために必ずしも「人海戦術」を要さないことを実例をもって示せるからだ。

JX通信社は、上記の3つの課題のうちとりわけ「コスト構造の課題」にフォーカスして取り組む。その挑戦を端的に言い換えれば「報道の機械化」だ。人間は人間でしか出来ないことにこそ取り組み、付加価値の創出に貢献すべきである。機械が出来ることを人間がやる必要はない。その人力の代替手段たる「機械」を創り、また、自ら人海戦術に依らない新しい報道機関のモデルを体現するのが、我々JX通信社だ。

(2017年5月)

米重 克洋 (Katsuhiro Yoneshige)
株式会社JX通信社 代表取締役
報道研究者

1988年(昭和63年)8月、山口県生まれ。私立聖光学院高等学校卒業後、学習院大学経済学部入学。幼少より新聞を愛読する、いわゆる「ニュースジャンキー」であり、2004年から4年間、航空専門ニュースサイトを運営(ピーク時月間30万PV)した経験から、オンラインニュースメディアのマネタイズの課題に関心を持つ。ニュースコンテンツをメディア同士で取引する「仮想通信社」事業を構想し、大学在学中の2008年に㈱JX通信社を設立。

メディア出演/掲載/寄稿

NHK「ニッポンのジレンマ」、日経コンピュータ、週刊アスキー、月刊エアライン、Yahoo!ニュース個人(オーサー)、その他多数