社長メッセージ

ニュースメディア周りの「イノベーション」なるものについての議論は、実に陳腐化している。
オンラインニュースメディアにとって、収益源は「課金」か「広告」しかない。そして、この20年間、業界全体がそのたった2つの収益源の追求にさえ失敗し続けてきた。

国内主要紙のWebからの売上は、つい最近までどこも軒並み1%未満だった。広告収益にしても、枠という「供給」は指数関数的に増えるのに、「需要」(見る人数×時間)は線形にしか伸びない。

それでは、需給ギャップが永遠に開き、限りなく平均単価ゼロ円に近づくマクロトレンドになることは自明だ。
結果、今日に至るまで、世界広しといえどもビジネスとジャーナリズムを両立し大成功を収めたオンラインニュースメディアはひとつとして存在しない。

それにも関わらず、まだ「いかにコンテンツにお金を払ってもらうか」
「いかに単価の高い広告商品を出し、踏んでもらうか」といった議論が喧しい。
もう、その議論は10年以上やってきたではないか。

全く必要ない議論ではないが、もう目新しいものはなく、ただループしているだけだ。
天動説を科学的に実証できるはずもないのに、いつまで同じ話を続けるのか。
ゴール設定のない議論が、論理的に完結できるとでも思っているのか。

そんな疑問が、いつも頭にある。

実際「ジャーナリストは”釣り”のスキルやネット文脈を身に付けろ」とか「新聞社はNPO形式で経営すれば良い」などという諦念に近い議論が多くなってきた。
いっぱしの社会規範を語る評論家でさえ、もはやジャーナリストに期待するのは「報酬なき良識」だけのようだ。
ジャーナリストや組織ジャーナリズムの役割、功績を過小評価するだけでなく、職業倫理を超えて過剰な自己犠牲を求めている巷間の議論に、私たちは対案をもって反対する。

ここまで20年、オンラインニュースメディアの将来が暗かったのはなぜか。

それもこれも、テクノロジーでも何でもないものを「テクノロジー」だとか「イノベーション」だとか騒いでジャーナリストと、ジャーナリズムにお金を払ってきた良質な読者、消費者を置き去りにしてきた結果だ。
私たちは、消費者の側から、ジャーナリズムに新しいビジネスモデルを提案する。

ジャーナリストでも広告主の側でもなく、純粋な消費者の側に立っているからこそ、ジャーナリストと手を取り合って、完全に一致する利害のもとニュートラルにどんなテクノロジーがより良い将来に寄与するかを研究し、開発できる。
そこに、広告主と消費者の間で倫理的ジレンマに陥る余地はない。

ジャーナリストは、本来、超高度な専門職であるはずだ。
その取材スキル、ノウハウ、文章の構成力といったものは、決して他の代替が利くものではない。
従って、彼らに「人間がやる必要のない仕事」「誰でも出来る仕事」を求めるべきではない。

全てのリソースを、消費者が求める付加価値を提供することにこそ集中投下していただかなければならない。
私たちは、そのために必要な「テクノロジー」のソリューション全てを提案し、提供していきたい。
それは、本当の意味で「テクノロジーとは何か」「イノベーションとは何か」を問うことになる。

単にアプリやCGMを作り、騙し広告を踏ませることは、ここで期待される「テクノロジー」でも何でもない。
本質的な意味で「イノベーション」を実現するテクノロジーをこそ、何年かかっても世に問うていく覚悟を持っている。
まずもって、私たちの Vingowが日本語で初めて実現した「ニュースの自動要約」は、その第一歩だ。

広告をいじれば、課金を頑張れば、”釣り”のスキルを身に付ければ…
それさえ上手くいけば、オンラインニュースメディアの未来は開ける ー
そんな天動説に、私たちはNOを突きつける。

広告も課金も必要だし、無駄ではない。むしろ圧倒的に大きな役割がある。
しかし、良質なジャーナリズムにかかる莫大なコストは、それだけでは到底賄えない。
収益の議論だけで解決できる問題ではとうになくなっているのだ。
ジャーナリズムの消費者という立場から、この分野の「しくみ」を変えて、もっと良い未来を尊敬するジャーナリストとともに手にしたい。

そのための取り組みも、真のテクノロジー、真のイノベーションにスイッチしていかなければならない。

その先導役を、私たちは担うことにした。

米重 克洋 (Katsuhiro Yoneshige)
株式会社JX通信社 代表取締役

1988年(昭和63年)8月、山口県生まれ。私立聖光学院高等学校卒業後、学習院大学経済学部入学。幼少より新聞を愛読する、いわゆる「ニュースジャンキー」であり、2004年から4年間、航空専門ニュースサイトを運営(ピーク時月間30万PV)した経験から、オンラインニュースメディアのマネタイズの課題に関心を持つ。ニュースコンテンツをメディア同士で取引する「仮想通信社」事業を構想し、大学在学中の2008年に㈱JX通信社を設立。

メディア出演/掲載/寄稿

NHK「ニッポンのジレンマ」、日経コンピュータ、週刊アスキー、月刊エアライン、Yahoo!ニュース個人(オーサー)、その他多数