全キー局と地方TV局の大半が採用 SNS報道とFASTALERTの秘密

2016年以降、報道機関でのSNSを通じた取材活動は急速に増えています。特にTwitter(ツイッター)では、事件・事故・災害の目撃者や「その瞬間」の動画撮影者に対して取材依頼を送る報道各社の公式アカウントがよく話題になっています。

では、こうした報道機関のSNS取材の現状はどのようになっているのでしょうか。彼らの活動を情報配信で支える、SNS緊急情報サービス「FASTALERT」の運営会社である弊社・JX通信社が解説します。

報道機関のSNS取材・活用の目的は?

報道機関のSNS取材の目的は、大きく分けて以下の3つです。

1. 事件・事故・災害などの発生情報の覚知
2. 「その瞬間」を捉えた写真や映像素材の探索
3. 特定の事件の関係者や目撃者の探索

これらの取材活動の根幹部分を支えているのが、弊社「FASTALERT」です。NHKと全ての民放キー局をはじめ、全国の大半のテレビ局や新聞社などがFASTALERTを既に導入しています。報道機関はどのようにして事件や災害のツイートを見つけているのか?と思われる方も多いかもしれませんが、その答えはこのFASTALERTにあるのです。

事件・事故・災害の発生情報はFASTALERTから

2011年3月11日の東日本大震災以降、日本でも「SNSで事件や事故、災害などの情報を集める」ことを目的とした報道各社の取り組みが数多く行われてきました。2013年にNHKに設置された「SoLT」(ソーシャル・リスニング・チーム)や、共同通信の「Dウォッチ」はその先駆けとされています。これ以降、報道各社でSNSを定点的に監視し、情報収集するチームや部署が相次いで設けられることになります。

しかし、これらの業務は非常に人手がかかることが課題でした。省力化するために自動で情報を集めるシステムやサービスは3.11以降いくつも開発されてきましたが、事件などと無関係の投稿が大量に混ざったり、取り漏らしが増えるなど人力を上回るパフォーマンスを出せずにいました。

こうした課題に気づいたJX通信社が開発したのが「FASTALERT」です。事件、事故、災害の発生情報をAI(人工知能)を用いて効率的に収集し、精度の高い情報をリアルタイムに配信することに成功しました。2016年9月にβ版をリリースしたため、同種のサービスでは実は最後発でしたが、約半年後の2017年4月までにNHKと民放キー局全局に導入され、その後も地方局などに系列単位で拡大しています。現在は大半のテレビ局がFASTALERTを利用するなど、報道機関の有償導入社数で最多となり、事実上の業界標準になっています。

※なお、FASTALERTはTwitter社等の利用規約に完全に準拠して、同社から公式に関連データを購入する形で運営されています。なお、このデータに非公開の個人情報は一切含まれません。また、写真、動画等を転売するといったことも一切ありません。SNS利用規約を遵守し、Twitter社などとの契約に基づいてサービスを運営しています。

FASTALERTで情報を得た後、報道はどう動くか

FASTALERTで情報を得た報道機関は、まず情報の内容を精査したうえで、警察や消防など事象に関係する当局や公共機関、企業などに確認取材を行います。一刻を争う事象の場合は、確認と同時に現場にヘリや中継車が向かうこともあります。

また、後から駆けつけるカメラマンにはどうしても撮影が難しい「起きたその瞬間の様子」の動画や写真が目撃者によって撮影されているケースもあります。こうした事象もSNSに投稿されることでFASTALERTの配信対象になるため、放送などで紹介すべく使用許諾を求めるとともに、撮影時の状況などを詳しく取材することになります。

一般の人から見えやすい取材プロセスはどうしても後者に寄りがちなため「報道機関がSNSで取材を済ませるのか?」といった疑問を持たれる方も多くいらっしゃいますが、実際にはそうではなく、膨大な取材活動の一環としてSNSを幅広く活用しているのが実態なのです。

※SNS取材については、詳しくはこちらのQ&A記事をご覧ください。

テレビ局や新聞社では、本社だけでなく一部の記者クラブや支局などにFASTALERTを閲覧できる端末を配置して、情報をチェックしています。従来はこうした、事件・事故・災害などの発生情報の取材は警察や消防に殆ど全面的に依存していました。しかし、現在ではSNSなどを通じて目撃者や当事者からダイレクトに情報を集められるようになったことで、報道の情報のながれが大きく変わっているのです。

また、現場の状況をより詳細に把握したり、通報に至らない段階の情報を収集するために警察や消防、自治体やインフラ系の企業がFASTALERTを導入する機会も増えています。

圧倒的な速報性と網羅性の秘密

JX通信社は、報道ベンチャーです。2008年の創業以来、ビジネスとジャーナリズムの両立というビジョンを掲げて事業に取り組んできました。

報道産業には様々な課題がありますが、その中でもマンパワーに依存しがちな産業構造は極めて深刻です。取材活動の新たなフィールドとして、SNSという場が増えたからといって、その分更に人海戦術でスタッフの人数を増やすわけにはいかないという問題もあります。

SNSの検索や情報の探索はFASTALERTにまかせて、記者の方には人間でしかできない取材を行っていただけるようにする、更には公共機関や企業の担当者様にも素早い危機対応を行っていただける ー こうしたサービスの形を実現するため、JX通信社では機械学習を中心とした人工知能の技術を活用しています。これが、FASTALERTが最も速く普及した秘訣である圧倒的な「速報性」「網羅性」の根幹です。

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