JX通信社

防災・減災・BCP

【インタビュー】「AIとIoTで熟練技術を継承する」応用地質が考える、これからの防災・減災

 2020年も全国で頻発し、激甚化が進む日本の災害。防災・減災分野、特に土砂災害など砂防分野で長年に渡り知見を発揮されている応用地質株式会社では、より精緻な情報を収集し災害予測に役立てつつ、熟練技術者が減少していくこれからの日本社会にあわせて、AIとIoTのフル活用に取り組まれています。

 AIの防災分野での最先端活用事例と今後のご展望を、同社 情報企画本部 ITソリューション企画部 松井 恭部長、信岡 大副部長(写真右:応用地質 松井 ITソリューション企画部長 左:信岡副部長)に伺いました。「ビッグデータ」「IoT」「AI」といったバズワードが、どう防災につながるのか、施策立案にお悩みの自治体職員の皆様、必読です。(文中敬称略)

【インタビュイー基本情報】
社名:応用地質株式会社 (OYO Corporation) 
公式HP:https://www.oyo.co.jp
設立:1957年5月2日
社員数:2,235名 (連結)、1,126名 (単体)
住所:〒101-8486 東京都千代田区神田美土代町7番地

IoTを活用した応用地質における防災

――まずは自己紹介と、ご担当されている業務について教えて下さい。

松井:応用地質株式会社は、「防災・減災」、「インフラ・メンテナンス」、「環境」、「資源・エネルギー」の4つの事業セグメントでソリューションを提供している会社です。今日のテーマとなるAIは、IoT、ICTとの組み合わせにより主に「防災・減災」、「インフラ・メンテナンス」分野で活用しています。ITソリューション企画部では、当社の豊富な地質調査技術と先端技術と連携させることにより、調査の効率化やイノベーションの推進を図ることをミッションとしています。

IoTによるコスト削減

――防災・減災分野のソリューションについて教えて下さい。

信岡:全国各地で自然災害が多発しており、全国のどこで災害が起きるのか分からないのが現状です。このことから、特定の場所を詳細に監視する従来型のシステムだけではなく、広い範囲を網羅的に監視できる防災システムの開発が急務になっています。その取組のひとつとして、防災・減災のためのIoTセンサー、「クリノポール」(土砂災害監視センサー)を開発しました。

 「クリノポール」の特徴は、比較的廉価でありながら、メンテナンスフリーと双方向通信を実現した点にあります。低コストで長期間モニタリングを行うには、急陵な現地に行くことなく監視を継続できる仕組みが必要となります。クリノポールは、内臓バッテリによる長期間駆動と双方向通信による遠隔地からの設定変更機能を持つことから、コスト低減に寄与できると考えています。

松井:簡単に設置できるというのもコンセプトです。今までの傾斜計は設置にプロの技術者が必要でしたが、クリノポールは専用の治具で斜面に穴を開け、そこに押し込んで電源を入れると、あとはクラウドで自動的にアクティベーションされます。設置と調整は1時間もかかりません。

信岡:一方で簡易型センサーが大量にあっても、それだけでは広域防災は実現しません。そこで同時に監視のためのプラットホームも開発しています。拡張性が高く、他社のセンサーや気象情報もプラットホームで一元的に管理・表示することが可能です。アウトプットの方法も通知メールの配信など、様々なバリエーションを提供しています。

簡易傾斜計 「クリノポール」

https://www.oyo.co.jp/products_lists/20656-2/

AI技術の活用

――設置する箇所はどのように決めるのでしょうか?

信岡:当社としては、そこがAIの出番だと考えております。従来の防災・減災サービスでは、熟練した地質技術者が地形図を読み、地形解析をもとに図面上で目星をつけた後に、現地で実際に確認してセンサーの位置を決めていました。しかし、それではやはりどうしても工数がかかります。また、人間が行う作業なので、社内でダブルチェック、トリプルチェックはしているものの、全員がまったく同じ視線で判断することは不可能ですし、どうしても技術者の微妙な基準の差が出てきてしまいます。
 そこでAIを用いて、クリノポールの設置対象となる危険な箇所を抽出するわけです。AIであれば短時間、かつ同一基準でモニタリングに最適な箇所を抽出することができるのです。10km×10kmの範囲であれば、従来早くて2・3日、さらにダブルチェック、トリプルチェックで1週間近くはかかっていた作業が、AIで抽出するとだいたい30分ぐらいで終わります。全国の地形全てを人間が読もうとすれば20年ぐらいかかってしまう計算になりますが、AIであれば1年程度で計算し終えることが可能です。

松井:現時点ではAIだけで設置箇所の決定をするまでには至っていませんが、すでに業務支援ツールとしては活用を始めています。さらに言えば、当然、地形は災害や時間の経過で変わっていきます。土砂崩れで崩れてしまった箇所があれば、危険区域の判定は本来、やり直さなければなりません。AIなら、文句も言わずに何度でもやり直してくれるはずです。
 全国の自治体で作成されているハザードマップは、本来定期的に更新が必要なのですが、それが必ずしも進捗していないことに危機感があります。AIを活用すれば実現できるはずだと考えています。

魔法の杖ではない、IoTとデータがあってこそのAI

――防災におけるAI活用に必要なものは何でしょうか?

松井:AIは魔法の杖ではないですし、ロジックは分からないが、とにかく結果が出たというのは防災・減災においてはよろしくありません。どのような理屈で導き出された結果なのかが分かるホワイトボックス化されたAIが必要だろうと考えています。
 人間の技術をどうデジタル化して伝承するか、という問題もあります。たとえば、地質技術者が地図上に鉛筆で線を引くと、線の太さによってはAIがそれを正確に判断できません。AIの開発は、そのような泥臭い部分から始まるんです。AIは決して夢の話ではなくて、実際は今まで人間が行ってきた取り組みの延長線上にあります。

――AIによってまったく新しい領域が生まれるということではなく、今まで人間が行ってきた取り組みを、様々な意味でリーズナブルにできるということなんですね。

松井:クリノポールにデータが大量に蓄積されていけば、センサーを大量に設置しなくても、その土地の危険度がAIで推定できるようになると考えています。ただ、それを実現するためにはもっと膨大なデータ量が必要ですし、AIの判定を人間が十分に検証していく必要もあります。
 まず「ビッグデータ」が必要、そのための「IoT」、そしてデータを処理する「AI」の順番に実装する必要があります。ところがAIが目的化してしまい、「ディープラーニング」などのバズワードだけが先行してしまうことが散見されます。我々はデータがあってこそのAIだと考えています。

――防災へのAIの導入で、そのほかにどのような問題が解決するとお考えですか?

松井:AIに頼らない防災には、技術の継承の課題があります。応用地質は高い技術を持っていますが、組織として技術を継承させていくことが重要です。師弟関係的な継承は時代にあまり合っていませんし、技術を使って標準化していくことが必要だろうと考えています。ただ、標準化すると技術の先鋭性が鈍ってくる弊害もあるので、そのバランスを取ることが不可欠です。またAIで100%できると思っても、まず上手くいきません。最低限のラインまではAIで行い、人間の労力を減らすことが大切です。
 応用地質には他社には真似のできない知見がありますし、技術者の「魂」の部分も大事にしていきたいと思っています。その「魂」を入れる熟練地質技術者は次第に引退していきますので、そのノウハウの継承にAIを活用することが大切です。もちろんAIは魔法の杖ではないので、応用地質が持っている本当の凄さを、AIを活用して継承するという形ですね。

インタビュアーより

AIが行う処理には、大きく分けて「分類」と「回帰予測」があります。

 回帰予測により従来の「職人技」であった地形判読を標準化し、技術継承と、より高頻度なハザードマップの更新や、将来的なハードウェア設備投資の抑制につなげようとする応用地質の取り組みは、激甚化・多様化する日本の災害に、厳しさを増す地方財政の中でどう立ち向かうべきか、AIによるアプローチを示すものです。特に「ハザードマップは頻繁に更新されるべき」という点には、はっとされた自治体職員の方も多いのではないでしょうか。AIによるハザードマップの自動作成の実用化に期待したいと思います。

 一方、AIによる「分類」で、大量のソーシャルメディア情報から災害発生に関する情報を仕分けし、地域を判定したうえで必要なものだけをプッシュ配信する法人・公共向け速報サービスが、JX通信社のAIソーシャル防災センサー「FASTALERT(ファストアラート)」です。

FASTALERT(ファストアラート)」はAIによる判定で、ノイズや無関係な情報をフィルタリングし、リスク情報をリアルタイムで受け取れるため、少人数の自治体防災職員でも、これまで防災カメラなどのなかった広範囲のエリアの発災情報を現地の写真情報などとともに早期に収集し、初動対応を迅速に行えます

本サービスは、共同通信やNHK、全ての民放キー局、新聞社などの大手報道機関のほか、中央省庁・地方自治体、BCP対応の必要な一般企業で、すでに幅広く活用されています。

無料トライアルも用意しておりますので、ご興味のある企業・団体・公共セクターの担当者様は、以下のページよりお問い合わせください。

FASTALERT(ファストアラート)

FASTALERT(ファストアラート)企業・団体・公共セクターのお客様のみに提供しています。

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