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防災・減災・BCP

意思決定が災害の被害を防ぐ上で重要な理由とその鉄則7選

自然災害発生時は、意思決定によってその後の被害状況が左右されるおそれがあり、事業を守る上では適切な意思決定が欠かせません。

しかし、具体的にどのように意思決定を行えば良いのか分からず、悩んでいる方もいるでしょう。

この記事ではそんな方のために意思決定の基礎知識と適切な意思決定を行う上でのポイントを具体的に紹介していきます。

この記事を読めば意思決定をする際に役立つので、ぜひ参考にしてください。

災害発生時に重要となる意思決定

意思決定とは、様々な選択肢の中から最善の対応を決めることであり、自然災害などリスク発生時に被害による影響を最小限に抑えるためには的確な意思決定が欠かせません。

もちろん、安全確保など様々な対応を行いつつ意思決定する必要があるため、難しいですが、被害の拡大を防ぐ上では少しでも的確な意思決定を行うことが大切です。

社会心理学や災害心理学では、自然災害など何らかのリスク発生時に心理的ストレスを和らげるために事態を都合の良いように過小評価してしまう心理を正常性バイアスと呼んでいます。

この正常性バイアスが避難先や避難のタイミングを誤るなど適切な判断が妨げられてしまう原因にも繋がっているため、的確な判断をする上では状況を冷静に把握する必要があるのです。

また新型コロナウイルスが蔓延する現在の状況では、集団感染リスクを防ぐために新型コロナウイルスを踏まえた意思決定が求められています。そのため、新型コロナウイルスに関する動向をきちんと把握しておきましょう。

例えば新型コロナウイルス対策が十分に実施されていない従来の避難所では、集団感染が発生しやすいことから日本政府が回避を求める以下の3つの密を満たす傾向があります。

  • 換気が悪い空間(密閉空間)
  • 人が密集している(密集場所)
  • 近距離で会話や発声が行われる(密接場所)

そのため、避難所は新型コロナウイルスを踏まえた対応を早急に求められているのが現状です。

例えば、避難者同士のフィジカルディスタンス(身体的距離)を十分に確保するためには避難所の収容人数を半減させる必要があり、避難所だけでなく自宅や知人宅、ホテルなど様々な場所へ避難する分散避難の実施が推奨されています。

2011年の東日本大震災で約515万人の帰宅困難者が発生し、無理に帰宅しようとした帰宅困難者が人命救助の妨げになるなど様々なトラブルに繋がったことから、企業においては「東京都帰宅困難者対策条例」の条例17号などで帰宅困難者の一時的な帰宅の抑制が求められています。

【東京都帰宅困難者対策条例条例17号】
事業者に従業者の一斉帰宅の抑制と従業者の3日分の食糧等の備蓄についての努力義務を課します

しかし、コロナ禍の現在では人が密集している状態になってしまうと集団感染へ繋がるおそれがあり、帰宅困難者となった従業員を全員オフィスに留めておくことは必ずしも正解とは断言できないと考えられるのです。

場合によっては帰宅困難者になった一部の従業員に対して、オフィス付近の安全な場所への分散避難指示を出すケースも想定されます。

新型コロナウイルス対策や避難所の動向などを事前に把握した上で、適切な意思決定を行うと良いでしょう。

詳しく新型コロナウイルスにおける3つの密や帰宅困難者を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

新型コロナウイルスにおいて3密の回避が重要な理由
コロナ禍で企業が把握するべき帰宅困難者の基本とその対策

求められる意思決定は時間と共に変化する

適切な意思決定は、リスク発生時の状況はもちろん、時間の経過と共に変化していくため、臨機応変な対応が不可欠です。

愛知県庁が発表する「愛知県における今後の災害情報対策への提言」で説明されているとおり、災害発生後は以下3種類のフェーズを辿って、必要とされる対応が変化していきます。

  • 警戒期・発生直後
  • 発災期(約3日間)
  • 復旧・復興期

発災期は、発生した災害の規模や被害状況によって前後しますが、適切な意思決定を行う上ではフェーズに応じて正確に状況把握しておくことが欠かせません。

また警戒期・発生直後には、避難や安否確認、災害対策本部の設立などがあげられますが、状況によって優先するべき対応は変わるため、平時から訓練を重ねて最善の意思決定ができるようにしておくと良いでしょう。

適切な意思決定を行う上での7つのポイント

次に的確な意思決定する上で重要になるポイントを説明していきます。どれも重要な内容になるので、ぜひ読み進めてください。

防災対策を徹底する

まずは二次被害を防ぐためにオフィス内に防災対策を導入しておきましょう。

耐震補強工事のほか、効果的かつ手軽に行えるオフィスの防災対策は以下のとおりです。

【キャビネットなどを固定する】
転倒による負傷を防ぐためにキャビネットはなるべく壁につけ、突っ張り棒やL字金具で固定しましょう。

【避難経路を確保する】
オフィスの出入り口付近などには物を置かず、スムーズに避難できるようにしておきましょう。

【窓などに飛散防止シートを貼る】
ガラス片による負傷を防ぐために窓やガラス製のドアには飛散防止シートを貼っておきましょう。

また前述した「東京都帰宅困難者対策条例」で記載されているとおり、企業には食糧などの防災グッズの備蓄が求められているのです。

水道・ガス・電気などのライフラインの復旧や人命救助が落ち着くまでに一般的に3日程度かかると言われています。

大規模な災害によって復旧が長期化する場合も考慮し、3日分を最低限として余裕をもって1週間分の防災グッズを用意しておきましょう。

条例の対象となるのは正規・非正規問わずに同じオフィスで働く全従業員であり、全従業員分の防災グッズを備蓄しておくことが望ましいです。

条例に書かれている努力義務とは、「〜するように努めなければならない」という意味合いであり、違反したとしても現時点では特に罰則を受けることはありません。

しかし、企業にはこの条例とは別に労働契約法第5条によって、従業員に対する安全配慮義務が法的に課せられています。

【労働契約法第5条】
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする

コストが惜しいからと一切防災グッズを用意しなかったことが原因で従業員が被害を受けた場合、安全配慮義務違反として法的責任を問われ、損害賠償金を支払わなくてはなりません。

そのため、全従業員分とまではいかなくてもできうる限りの防災グッズを備蓄しておきましょう。

またコロナ禍の現在では新型コロナウイルス対策でテレワークを実施している企業も多く、さらに集団感染リスクを低減させるために分散避難が推奨されています。

この状況を踏まえて以下のような工夫をしておくと良いでしょう。

  • 防災グッズを従業員が持ち運びしやすい場所に保管しておく
  • 従業員の自宅にも防災グッズを備蓄しておくように伝える

詳しく備蓄するべき防災グッズの種類を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

Withコロナで備蓄が不可欠な防災グッズの現状とその基本

BCP・防災マニュアルを策定する

災害などのリスク発生時に備えて、きちんと事前にBCP・防災マニュアルを策定しておきましょう。

BCP(事業継続計画)とは、自然災害などのリスク発生時に被害を最小限に抑えて事業の継続または早期復旧を図るための計画のことです。

BCPにはリスク発生時の対応を事前に記載しておきますが、このBCPが導入されていない状態でリスクが発生すると、混乱が生じることで適切な意思決定ができないばかりか、対応の遅れによってさらに被害が拡大してしまうおそれがあります。

従来のBCPでは今ある経営資源(ヒト・カネ・モノ)に基づいたシナリオベースの内容になっている傾向がありますが、新型コロナウイルスの影響によって想定以上に経営資源が不足する事態に陥る状況も十分に考えられます。

そのため、大規模な災害によって従業員が出社できない状態が続くなど経営資源自体にリスクが発生した場合の対応も明確に定めておきましょう。

BCPや防災マニュアルの策定後は、訓練で従業員に浸透させていくことが大切です。

訓練にはリスク発生時のシナリオを用いますが、使い回すと想定外の事態が発生した際に対応できなくなってしまうため、火災から地震にするなど訓練の度に内容を変更します。

またコロナ禍において従来通りの対面で行う防災訓練を実施すると集団感染へ繋がってしまうリスクがあります。

実際に朝日新聞の「宮城)16市町村、防災訓練は中止や縮小 6月予定分」や青森県の十和田市役所が発表する「令和2年度十和田市総合防災訓練の中止のお知らせ」で説明されているように新型コロナウイルスを踏まえた防災訓練を縮小または自粛されるケースも多いのが現状です。

集団感染を防ぐために防災訓練は、オンラインで机上訓練を実施すると良いでしょう。

ここでは簡易的な紹介となりましたが、詳しくBCPや防災マニュアルを知りたい方は以下の記事をご覧ください。

コロナ禍でBCPが重視される理由と策定する上でのポイント
防災マニュアルの効果的な作り方と防災に必要な2つの対策

災害対策本部を設置する

意思決定で定めた対応を浸透させるためには、まず災害対策本部を設置しておくことが大切です。

災害対策本部の部門やメンバーは事前に決めておく必要があり、札幌市役所が発表する「災害時の組織体制の例」では以下のように定められています。

【全体責任者・副責任者】
災害対策に関する責任者

【情報連絡・広報係】
災害情報などの収集・管理や報道機関やインターネットへの広報

【消火・安全係】
初期消火や安全確認など

【救出・救護係】
人命救助や応急手当、医療機関への移送

【避難誘導係】
危険な場所からの避難誘導や避難場所への避難誘導

【社員救護係】
備蓄品などの持ち出しや調達・配布、帰宅困難者の支援など

【点検・修理係】
設備や建物の点検や修理

上記のような災害対策本部のメンバーを決めた上で、訓練で対応をきちんと浸透させておきましょう。

また場合によってはリーダーなどのメンバーが不在であったり、被害を受けてしまう場合も十分に考えられるため、複数の代行者を選んでおくと万が一の際も安心です。

意思決定をスムーズに伝達させる

的確な意思決定を行なったとしても、スムーズに意思決定で決まった指示が災害対策本部の部門に伝わっていなければ適切に対応できず、混乱が生じてしまうおそれがあります。

災害などリスク発生時の組織マネジメントであるインシデント・コマンド・システムでは、指揮系統を一元指揮と統合指揮の2種類に分類しています。それぞれの意味は以下の通りです。

【一元指揮】
各部門の1人のリーダーから指示を受けたり、報告したりする指揮系統

【統合指揮】
各部署のリーダーを集めて、ルールや指示を出す指揮系統

これらの指揮系統には指示の乱立や非効率な対応を防ぐという役割があります。

例えばリーダーの指示に従って対応していたところにさらに地位の高い組織の人間が新たな指示を出すと混乱が生じ、意思決定で共有していた内容が守られなくなってしまう可能性があるのです。

リスク発生時の状況やリスクの種類によって実施するべき指揮系統は異なりますが、混乱を防ぐために一度決めた指揮系統は厳守すると良いでしょう。

ここでは簡易的な紹介となりましたが、より詳しくインシデント・コマンド・システムを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

インシデント・コマンド・システムの実施が最重要な理由

コロナ禍の動向や過去の事例を確認する

自然災害などリスクが発生していない平時にきちんと新型コロナウイルス対策やコロナ禍における避難所の動向を把握しておきましょう。

前述しましたが、新型コロナウイルスが蔓延する状態では集団感染リスクがあるため、従来の対応では通用しない可能性があります。

現時点で立証されている新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染の2種類です。

【飛沫感染】
新型コロナウイルス感染者による咳やくしゃみなどによって飛び散った飛沫(ウイルスを含んだ水分)を鼻や口から吸い込んで、感染することです。

【接触感染】
新型コロナウイルス感染者の飛沫に手で接触し、その状態のままで目・鼻・口などの粘膜に触れると感染することです。

照明のスイッチやドアノブ、共有されている備品など不特定多数の方が触れる箇所には、十分に注意する必要があります。

そのため、平時はもちろん災害発生後の安全な避難先でも以下のような新型コロナウイルス対策を実施しておきましょう。

  • マスクを着用する
  • 換気をする
  • 手洗いとアルコール消毒を定期的に行う
  • フィジカルディタンスを確保する など

災害発生時は従業員が帰宅困難者になるおそれがあり、安全確認や人命救助が落ち着くまではオフィスに避難するケースも想定されます。そんな場合に備えて避難所の対応も把握しておくと良いでしょう。

またリスク発生時の状況によっては、どのような意思決定を行えば良いのか判断に困るケースも想定されます。

平時に過去の自社や他社の意思決定、それに至ったプロセスを具体的に調査し、どのような事態に直面した場合でも的確な意思決定を行えるように訓練しておくと安心です。

避難所の対応を具体的に知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

コロナ禍における避難所運営の基礎知識と具体的な対応6選

置かれている状況を具体的に把握する

適切な意思決定を行う上では、その判断材料として自然災害などのリスク発生状況を正確に把握しておくことが重要です。

社内はもちろん、取引先と連携し、迅速で正確な情報収集を行いましょう。自然災害などの場合、近年は個人間だけでなく企業や自治体で以下のメリットがあるSNSが利用されています。

  • 今、起きたばかりの事象がほぼリアルタイムで調べられる
  • 報道ではカバーできない細かい地域の情報も分かる
  • 災害発生時でもインターネットが繋がれば利用できる

SNSではテキストだけでなく、画像や位置情報も投稿されるケースも多いため、より状況を詳しく把握できます。

しかし、これと同時に悪質なデマや誤った情報も拡散されやすいというデメリットも抱えているのが現状です。

人海戦術でSNSに投稿された情報を分析しても正誤の判断が難しく、事象の発生からタイムラグが空きますし、大量に情報が投稿されるので、どうしても必要な情報の取り漏らしが発生してしまいます。

デマや誤った情報の収集が許されない企業や自治体は、SNSを有効活用しつつもこの問題をクリアするためにFASTALERTなどのSNS緊急情報サービスの導入を進めています。

FASTALERTなどのSNS緊急情報サービスは、AIがリアルタイムで自動的に情報を収集し、正確な情報のみをサービス利用者に提供する仕組みです。

SNSに投稿された情報の分析にかかっていた時間的・人的コストを削減できるだけでなく、初動対応を素早く行えるようになります。

SNSに投稿された情報の分析に悩んでいる企業担当者は、導入を検討すると良いでしょう。

安否確認サービスを導入する

自然災害などのリスクは、いつどこで発生するのか分かりません。

特に新型コロナウイルス対策でテレワークを実施している企業も多いため、場合によっては従業員が在宅勤務をしている最中に大規模な自然災害に巻き込まれてしまうケースも想定されます。

そんな場合に備えて、直ちに従業員の安否確認およびに意思決定で定めた指示を出せるように安否確認サービスを導入しておくと良いでしょう。

安否確認には従業員の被害状況を把握するほか、事業の復旧ができる従業員を見つけるという重要な役割があります。

電話やメールで十分だと考えている方もいますが、2011年に発生した東日本大震災では震災後に安否確認で回線などが輻輳状態に陥ったことで通信規制が実施され、一時的に利用できない事態に陥ったのです。

大規模な災害発生時は電話などが一時的に利用できなくなるケースも多く確認されています。

従業員の安否確認や意思決定で定めた対応の共有は迅速に行うことが求められているため、安否確認サービスや法人向けSNSなど必ず電話やメール以外にも安否確認の手段を用意しておくと良いでしょう。

またオフィスのみで安否確認サービスを操作できるようにしてしまうと大規模な災害が発生した場合、迅速に安否確認できないおそれがあります。

そのため、インターネットのブラウザでどのような場所でも操作できる安否確認サービスを導入した上で、住む地域が異なる複数の担当者を選んでおくと安心です。

詳しく安否確認の手段を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

BCPで安否確認が最重要な理由とその基礎知識

まとめ

今回は意思決定の基礎知識と意思決定を行う上での具体的なポイントを開設しました。最後にもう一度おさらいすると本記事の重要なポイントには、次の3点があげられます。

  • コロナ禍の現在では新型コロナウイルスを踏まえた意思決定が重要
  • 適切な意思決定は時間経過と共に変化していくため、その時々の状況把握が必要不可欠
  • 意思決定で定めた対応を共有するためには指揮系統を明確にしておくことが大切

この記事を参考にして、適切な意思決定を目指しましょう。

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